仕事は3つに分ける 女性活用で知られるカルビーで、ダイバーシティ―を推進してきた松本晃会長兼CEO。仕事についてこう断言した。

仕事には三つある

やらなくてはいけない仕事。

やった方が良い仕事。

やらなくても良い仕事」

その上で、松本会長はこの三つの仕事を、する・しないに仕訳する。

「この三つの中で、③はやらなくていい。

②はやめた方がいい。

大事なのは①だけだ。

しなくちゃいけない①の仕事が終わったら、帰れ。そう、社員には言っている。

1日を仕事だけで終わるのではなく、西洋人のように、仕事も私生活も楽しみなさい、と。1粒で2度味わえ、公私ともにエンジョイしろ、と」カルビー会長会見

日本記者クラブでダイバーシティ―について語った4月25日の会見の中で、話したものだ。無駄な残業を嫌う松本会長に言わせれば、すぱっと①だけで切り上げて帰るなら、だらだら残業はなくなるはず、ということだろう。

三つに仕分ける三分類法は、仕事だけでなく、ものごとを整理する時の鉄則なのだろうか。

部屋の片付け術でもよく、三つに振り分けろ、と言われる。持っている数多の服や雑貨や本や思い出の品々を、とにかく「捨てるもの」「捨てたくない(残したい)もの」「どちらか決められないもの」のどれかに分類しろ、と説く。

書類整理もそうだ。「残しておくべき書類」「(残さなくてもいい)捨てる書類」「処理が決まるまで、とりあえず取っておく(処理がまだ決まっていない)書類」。この三つに書類箱などで分別しろ、とされる。

ここで松本会長の「仕事考」にならえば、「すべき」以外は「しない」方がいい。片付けでは「残したい」以外は「決められない」ものも捨てるべき、書類も「残すべき」以外は「とりあえず」はなく捨てるべきもの、となる。

そうはいっても、なかなか捨てられない。「未決」ばかりが増えていく、という人も多いのでは? 私もその一人だ。だがその性格――もういらないかもしれない書類やモノも、なんとなく捨てがたくて未決のまま手元に残してしまう、そういう片付け下手な性格――が、実は、長時間労働の元凶かもしれない。

しなくてはいけない以外の仕事を「しない」と決めて断捨離できないがために、②「やった方がいい」どころか、③「やらなくてもいい仕事」までもつい抱えこんでしまう。やっておいた方が便利だろう、周囲も助かる、そんなことにまで親切心で手を出すから、便利使いされて長時間労働になる。結果、「人生は仕事だけ」のワーカホリックになる。

部屋が片付かないと嘆いているご同輩。もしかしてあなたも、つい、しなくていい仕事まで引き受けちゃったりしていませんか? それで人生の時間を無駄にしていませんか?

部屋の空間の無駄よりも、人生の時間の無駄のほうが、どれほど勿体ないことか。前者は金で解決できるが、後者は取り返しがつかない。

ここは部屋や書類の片づけから始めることが、心の断捨離、脱ワーカホリックの早道かもしれない。目に見えるモノで訓練して、③「やらなくてもいい」はもちろんのこと、②「やった方がいい」までも未練なく捨てられる心性になれれば、①「すべき仕事」だけで、すぱっと切り上げて帰れる人になれる、かもしれない。

さあ、まずは洋服の整理からだ。頑張れ、私。「目指せ! 脱・だらだら仕事人間」。

(2017・04・28、元沢賀南子執筆)

(4月25日、日本記者クラブで開かれた松本晃会長の会見「JUST DO IT! ~カルビーのダイバーシティ―と働き方改革~」から)