コルタナでハーマン・カードンと人工知能スピーカー

マイクロソフトのロゴ

マイクロソフトの次なる展開は?

 「地球上のすべての個人とすべての組織が、より多くのことを達成できるようにする」を企業の使命として掲げるマイクロソフト(MS)。今年が元年とも言えそうな「人工知能(AI)スピーカー」は、MS社も高級音響メーカーと組んだ製品を年内に発売する。また、オフィス365の使い勝手を高め、ルノー日産やマクドナルドなど、企業への技術提携も進めている。

 「ソフトバンクワールド2017」(7月20、21日、東京都内)の中で21日、講演をした日本マイクロソフトの榊原彰執行役員が話した。MSがIoT、AIを活用した技術は3つあるという。①コルタナ(エージェント)②MSグラフ(アプリ)③サービスで、③としては、リアルタイムで翻訳・通訳できるソフトや、自分のペットを見分けられるようにカスタマイズできる画像認識ソフトなどを、一般向けに無料APIで提供している。(詳細は前回記事をご参照ください)

 ①のコルタナは、マイクロソフトの製品に搭載されている音声認識ソフトだ。ウィンドウズ10に標準装備され、iOSやアンドロイドにも対応している。すでに5億台のデバイスにインストールされたという。これまで130億以上の質問に答え、毎月1億4500万人が実際に使っている(アクティブ・ユーザー)。学習によって、より賢さを増しているという。

 このコルタナを、MSのAIスピーカーに搭載するという。AIスピーカーは、音声認識技術を使って、天気予報を聞いたり、ネットショッピングをしたり、メールのやりとりをしたりもできる。スカイプでの通話もできる。MSは音響メーカー「ハーマンインターナショナル」と組んで、「ハーマン・カードン・インボーク」を今秋、米国で発売する。

 AIスピーカーの先駆けとなったのは、アマゾンが昨年発表した「エコー」で、音声認識には同社の「アレクサ」が入っている。グーグルは「グーグルホーム」を出し、アップルも6月の開発者向けイベント「世界開発者会議(WWDC)」で「ホーム・ポッド」の年内発売を発表。ラインもクラウドAI機能「Clova」と連携して「WAVE」を発売する。

コルタナを車に搭載:ルノー日産、ドライブスルーはAIが対応:マクドナルド

 ただ、これらのAIスピーカーは卓上型で、家庭内での使用を想定している。一方、MSはコルタナの車への搭載も進めている。オフィス365を組み込み、車内でコルタナを通じてスカイプ会議をしたり、ファイルを見たり、ダッシュボードにパワポ画面を出してスライドを見たりもできる。実際にルノー日産にプラットフォームを提供しているという。

 ②のMSグラフはクラウド上で展開している。オフィス365はこれに対応しており、デバイスをまたがった作業が可能になった。例えば、パソコンのデスクトップ上にあったファイルを、コピーしてスマホなど他のデバイスにペースト(貼り付け)ができる。AIを使って音声認識とも組み合わせた実例が、マクドナルドのドライブスルーの注文システムで実施されているという。

 客は車の中からマイクに向かって注文を話す。音声認識システムは、雑音の多い中から注文を聞き取り、ワードに文章として書き起こす。このワードはそのまま注文票にもなり、厨房に指示が行く。注文を受けた店員は、聞き取った内容が正しいかを確認はするものの、レジ打ちは一切しない。客は商品を受け取り、支払いを済ませるとレシートが出る。音声認識とデバイスをまたぐアプリを使うことで、販売管理が容易にできるようになる。

 マックだけではない。同様にAIを使うことで、店員の仕事が一つ減れば、その分の人手を他の仕事に回すことが可能になる。店員はレジ打ちの仕方を覚える必要もないし、レジ打ちのミスもなくなる(AIが聞き取りミスをする回数も、学習によって漸減するだろう)。

 注文取りや計算といったルーティンな仕事をAIがデジタルレイバーとして肩代わりしてくれれば、その分、他のクリエイティブな仕事に、生身の人間は関われるだろう。

 AIは、人の仕事を奪うのではなく、より人間的な仕事ができるように手伝ってくれるもの、なのだ。

(元沢賀南子執筆、この項終わり)