大御所から若手まで内外アーティストが参加、3日間で2500人超来場
国内外の現代アートを集めた展示即売会「アートフェアアジア福岡」(AFAF、主催・アートフェアアジア実行委員会)が9月8~10日、福岡市のホテルオークラ福岡で開かれた。第3回となる今回、参加した画廊は37に上った。地元福岡、東京や大阪のみならず、韓国から4画廊、台湾から2画廊も参加し、来福したアーティスト本人と交流するコレクターらの姿が各所で見られた。関連セミナーも開かれ、3日間で2503人(主催者発表)が訪れた。
アートをより身近に感じ、日常にアートがある豊かさを体験してもらいたいと、ホテルの客室が展示場となっている。9階フロアを借り切り、1画廊が1部屋ずつ作品を展示した。
作品は油絵、日本画、版画、写真、陶芸、彫刻、インスタレーションなどまで。展示方法も画廊ごとに異なり、作品がまるで人のようにベッドに横たえられたり、洗面所やシャワールームを彩ったり、壁や窓に並べられたり、ベッドを撤去して窓も塞いだうす暗い中に置かれていたり。
出展したアーティストは、筆者が数えた限りで140人を超える。画廊が発掘したばかりの若手の無名作家から、写真家・細江英公などの物故した大御所まで。手のひらに乗る小品から壁一面の大作まで、金額も数千円のものから数百万円台のものまでと幅広い。気に入った作品は早い者勝ちのため、次々と「売約済み」を示す赤丸シールが張られていた。
ベッドの上にも窓の上にも作品
ホテルならではの展示環境が生きたのは、「コンテンポラリーヘイズ」(福岡・東京)で参加した手嶋大輔さんの彫刻だ。ベッドに置かれた作品は、木彫の、突っ伏している女の子像。「木だけれど、柔らかい感じを作りたかった。脱力感を表現したかった」と手嶋さん。まさしく女性のリアルといった感じで、仕事や学校から帰って来て、疲れてベッドにダイブする様子は脱力そのもの。木製の堅い感じはなく、もこもこと雲霞のごとく立ち上る髪の毛は、彼女の独り言を可視化した漫画の吹き出しのようでもある。底辺にあたる顔は描かれているのか気になるところだが、「お買い求めいただいた方だけのお楽しみ」とのことだ。
手嶋さんはこの脱力木彫シリーズをいくつも手掛けており、ベッドには長さ60センチほどの女の子二つが置かれていたが、窓際には、長さ25センチほどの女の子が突っ伏していた。こちらは頭から花を生やしていた。頭の中がお花畑になるような、何かハッピーな出来事がこの日この少女に起きたのかしらと、想像を膨らませたくなる。ほかにも、大粒の涙を流す子供、空也上人像(重要文化財)さながら、言葉が口から連なって飛び出している子供など、どれもイソップやグリムのような物語性を感じさせる木彫群だった。
さえぎるもののない窓際で日差しを受けて魅力を発揮していたのは、「ギャラリーIDF」(名古屋市)で展示されていた酒井陽一さんの縦横18センチほどの作品だ。アルミニウムの板の表面にシルクスクリーンで透明コーティングし、ピカピカに鏡面磨きをする。そこに削って絵を描き、穴を開けた部分には裏側からアクリルをはめ込んで油絵具で色を塗る。
「蜘蛛の糸に光る朝露を表現した」(酒井さん)ものや「夏の入道雲をイメージした」(同)ものなど、シリーズは計9点。後ろから自然光が指す窓に掛けると、時間帯ごとに、太陽光の色温度の変化によって作品も多様な表情を見せる。「朝、陽を浴びてきれいだった」と画廊スタッフが言うのも、朝日がまっすぐ入る、ホテルの9階という環境のおかげだ。
(20170925、元沢賀南子執筆)