積極投資をしないと資産運用はできないと思いつつ、何がいいのか――悩む一人として、銀行や不動産投資のセミナーに行って感じたエッセンスを紹介する最終回は、不動産投資について、その3。実際の利回りを考える時の注意点をお届けする。

運用次第で年利がプラスにもマイナスにもなる金融投資に比べると、不動産投資は最初から利回りがある程度見込めるのが安心に見えるのだろう、と前回書いた。

表面利回り(%)=年間家賃(予想)÷物件価格×100

ただ、注意点もある。表面利回りと実質利回りがかなり乖離していることがあるのだ。購入時は、物件価格のほかに、a)税金(不動産取得税)やb)不動産会社への仲介手数料、c)登記費用やローン設定に伴う司法書士への謝礼など諸経費(A=a+b+c)がかかる。それも購入価格に加えて利回りを計算しよう。

利回り(%)=年間家賃(予想)÷(物件価格+諸経費A)×100

実際は、さらに、保有し続ける限りかかってくる維持費のことも考える必要がある。維持費には以下の3つがある。

    固定資産税。国や自治体に、毎年、土地や建物の評価額に応じた固定資産税を支払う必要がある。区分所有の場合は1軒あたり数万~数十万円だろうが、中古の場合は購入時に交わす書類で前年度の税額が分かる。物件の立地や広さによっては100万円を超える金額になることも。

    物件自体のメンテナンス費。一棟マンションやアパートの大家ならば、屋根防水や鉄部塗装、水回りやエレベーターの改修といった多額の補修費用を、数年~10数年~20数年ごとに用意しなければならない。区分所有マンションのオーナーの場合は、維持管理費として、管理組合に管理費や修繕積立金を毎月払うことになる。古いマンションの場合、毎月の修繕積立金で足りずに「臨時徴収」で数十万円の負担を強いられることもある。マンションの機能を健全に保ち、物件の価値を落とさない(時には修繕によって価値が上がることもある)ための必要経費だから、払わざるを得ない。

    管理委託料。たいていは物件を紹介した不動産会社から、物件の管理委託を求められる。受託した会社はオーナーに代わって、賃借人からの日々のこまごまとした要求や質問や苦情に答えたり、水漏れ事故などの突発事態に対応したりする。管理委託料は、毎月の家賃の5%かかる(抜かれる)のが相場だ。また、2年~3年に1度の更新時には、更新事務手数料も半月分ほど取られ、賃借人が退去した暁には、新しい賃借人を見つけるための手数料を半月~1カ月分ほど取られるのが一般的だ。

(不動産会社の中には、この管理手数料目当てに物件を売っているところもある。つまり管理手数料は、ただ右から左へとお金を流すだけでもらえる、楽ちんな儲けだからだ。しかも、オーナーが所有し続ける限りずっと、毎月固定で入ってくる。賃借人や建物に問題が起きなければ実動も不要。家賃の5%は安いとはいえ、企業にとっては楽で手堅い儲けなのだ)

以上の3つの維持費を加えて、利回りを考えてみよう。物件価格+購入時諸経費(A)を取得価額とし、家賃収入から保有中の維持費等経費の総計(①~③)を差し引いた実質賃料収入で、利回りを改めて計算する。

実質利回り(%)=(年間の予想家賃―年間の維持費等経費)÷(物件価格+購入時諸経費)×100

この実質利回りは、物件によっては表面利回りより大きく下がることがある。特に、物件が古いほど、物件価格は安いが維持管理費がかさむので、要注意だ。また、銀行などから借金をして物件を購入する場合、この数式の分子部分からローン返済分をさらに引かなければならない。さらに儲けは減る。

(年間の家賃収入―維持費等経費―ローン返済額)÷(物件価格+購入時諸経費)=実質利回り

つまり、表面利回りだけ見ると結構なプラスが期待できていた物件でも、築年が古いなどで維持費がかさめば利回りは下がるし、さらにローン負担が大きければ、実質的にはマイナスになりかねない。もちろんローン返済が終わるまでの辛抱だが、それを理解した上で返済額を設定したほうがいい。

ローンを組んでまで購入することはあまり勧めない、という理由がここにある。きちんと維持管理費まで計算して、不動産投資は検討しよう。

(この項終わり)