投資したくなる会社5~さわかみファンド運用報告会から

メックの展示

メックの技術はIoT,自動運転、5Gの成長分野での需要が見込まれる=メックの展示から、大阪市で

 さわかみファンドを運営するさわかみ投信が大阪市で9月上旬、運用報告会を開いた。一般投資家向けに事業内容を説明した30社の中から、投資したくなる魅力的な企業を紹介する第5回はメック(東証4971、本社・兵庫県尼崎市)。電子基板を作る時に、金属の加工で必須となる薬剤のメーカーだ。iphone8などスマホやタブレット、任天堂スイッチなどゲーム、自動車向けで受注しており、株価は年初の1.7倍、この4年で8倍以上と、右肩上がりを続けている。

 株価は7月に1300円を抜けて以来、9月下旬には最高値の1800円超えを記録した。原因は「第一四半期に数字を修正した影響」と、コーポレートコミュニケーション(CC)室の坂本室長は分析する。「5G、AIoT、自動運転といった、今後の成長分野での需要が見込まれることが好感されている」と見る。成長分野は主に二つあり、一つはスマホやタブレットで、シェアを拡大中だ。二つ目は自動車、特に電気自動車(EV)の製造過程で薬剤の需要がある。欧州が脱ディーゼル・EV化を発表したことが追い風となる。

 株主の35%を機関投資家が占め、GPIF(年金機構)やレオスキャピタル(ひふみ投信)、さわかみ投信などの大手が投資をしていることも、投資家にとって安心材料になっているようだ。2013年1月に200円だった株価は4年で9倍近くになった計算だ。

 売上高は、48期(2016年)が92.5億円、営業利益が1887億円。39期(07年)に91.1億円あった売上高は、リーマンショックで、41期(09年)には61億円に下がった。当時、パソコン向けの薬剤が売上高の半分を占めていたため、パソコン市況の悪化をもろに受けた。それが46期(14年)以降、90億円台に戻した。スマホの売上増が影響した。ただし49期(今年)から、決算期を3月から12月に移すため、12カ月に満たない今期は売上高は下がる。それでも90億円の予想だ。

メック売上高

メックの売上高はここ数年、90億円台で推移している=同社の展示から、大阪市内で

 メックが得意とするのは付加価値の高い薬剤で、海外売上高比率は75%に上る。銅金属処理用が主軸商品で、技術的に難しいパソコンのパッケージ基板(PKG)はトップシェアで、ほぼ独占的状態を誇る。液晶テレビのPKGも世界トップで、4Kや8Kが増えると売上も拡大すると見込まれる。スマホのマザーボード(HDI基板)のシェアも拡大中で、新アイフォン(アイフォン8)では今まで以上に使われている。高い技術力を必要とするPKGやHDI、高多層基板などでシェアを伸ばしている一方、国内の大手や台湾など海外メーカーにコストで負ける、技術的には易しい基板用はシェアが低い。また、銅以外のアルミ用やニッケル用の処理剤は苦戦している。

 メックの中核技術は界面創造だ。基板を製造する時、銅の表面を薬剤で処理することで、効果をもたらす。薬剤による処理の仕方には、①表面を粗化(でこぼこにすること)して、樹脂との密着を上げる、②選択エッチング。複数の素材のうち狙った素材のみを溶かす、③表面の密着性を化学的に向上させる、④配線を形成する、の4種類がある。

 このうち、売上の半分を占めるのが、①の粗化だ。スマホのほか、車やテレビ、ゲーム用の基板に使われる。6.5インチ・タッチパネルは、任天堂スイッチのタッチパネルと、アイフォン8とが、同じ薬品を使っている。これが実は、任天堂スイッチが品不足になった理由だった。2.2億台のアイフォン用が優先されて、数千万台の任天堂用の生産が追い付かなくなった。

 アイフォン8は、電池をアイフォン7より大きくL字型にして、電子部品は小ささを約半分にと高密度化させた。アイフォンは、基板の断面1.5ミリに12層の銅を配線するため、厚みに苦労する。7では厚みを減らすためにイヤホンジャックを消したが、8では有機ELモデルが出て、指紋認証も採用される。スマホは電池が発熱しやすく、冷たい時と熱を持つ時で熱膨張・縮小を繰り返すと樹脂が剥がれる危険性があり、より密着性が求められる。そこで、メックの薬剤が採用されたという。アイフォンの有機ELモデルのディスプレーでも同社製が使われるため、スマホ需要は、今年から来年にかけて飛躍的に伸びる可能性が高いという。

(この項続く)(元沢賀南子執筆)