投資したくなる会社5~さわかみファンド運用報告会から

メック、スマホの中身

スマホの中身はこんな風。こうした細かい基板の製造にはメックの薬剤が使われる=同社の展示から、大阪市で

 さわかみ投信が大阪市で開いた運用報告会に参加した30社のうち、投資したくなる魅力的な企業を紹介する第5回はメック(東証4971、本社・兵庫県尼崎市)。電子基板を作る時に、金属の加工で必須となる薬剤のメーカーだ。今年に入って株価の伸びが顕著だが、好調の影にスマホ用の需要増があることは前回書いた。今回は、三つの成長分野のうちの残り、自動車と5Gについて。

 自動車の安全運転機能も、メックにとっての成長エンジンだ。実際にどんな基板が使われているかを調べるため、最新のプリウスを買って分解、確認した。自動運転や自動ブレーキ、エンジンブレーキ制御などの安全機能のほか、ドアミラーや死角用ミラーなどの車載カメラにも、基板が使われている。その結果、カメラ、レーザーなどはごく最近の技術の高密度な基板を使っており、銅表面の凸凹からメック製の薬品が使われたことが確認できた。

 故障しても交換で済むスマホに比べて、車の設備は故障してはいけない。リコールを出すと会社が潰れてしまうからだ。そうした信頼性の求められる基板にメック社製が使われていたことで、自社製品の信頼性が証明された、と担当者は胸を張る。

 5Gは、2020年までに、4Gから移行する次世代の通信技術だ。4Gで2時間の映画をダウンロードするのに10分かかっていたのが、5Gになると2~3秒で済むようになる。基地局も変わり、5G整備後はスマホの買い替え需要が起こると見られ、商機となる。

 AIoTでも成長が期待される。電子基板の処理には薬剤が使われるため、今後も基板の伸びとともに薬剤の需要も伸びるだろう。生産が間に合わない状況を改善するため、2018年7月にはタイに新工場を稼働予定だ。東南アジアの成長率が高いこともあり、増産で売上は更にプラスになるだろう。

 今後の数年は、今採用されている粗化薬剤で堅調な売上が期待できる。ただし、その後はどうか。インテル、アップル、サムソン等にマーケティングをかけて、どういう技術が求められるかを探していく予定だ。オープンイノベーションで大学などとの共同開発も考えている。

 国内他社との競合はどうか。例えば、薬剤メーカーの某社とは一時期、ある電子基板用の薬品でライバルだった。納品前のテスト時に競ったものの、最終的に、メックが改良品で勝てたという。競合社にとって電子基板事業は売上の一部に過ぎなかったが、メックは柱の事業。研究開発力と対応のスピード感で差が出たという。こうした強みを生かし、研究開発力で競合をしのぐしかないという。

 研究開発を支える技術陣の充実は、メックの特徴だ。研究開発投資は連結売上の10%を占め、単体従業員の30%が研究開発に携わっている。製品の性能を上げる技術の進化は速い。追い付き、先に行くためには、研究開発投資が不可欠なのだ。

 そのため、優秀な人材をたくさん確保することにも金をかけている。幸い、研究員の人材確保には苦労していないという。「本社も研究所も尼崎なので、関関同立など、関西の優秀な大学から学生さんが集まって来てくれる」と、CC室長。

メックの展示

メックは電子基板の製造に不可欠な薬剤メーカー=同社の展示から、大阪市で

 昨年秋、約40億円をかけた尼崎本社の建て替えが完了した。本社機能だけでなく、研究開発や生産部門も本社屋内に集約した。開発部隊が身近にいる利点は、生産や研究など部門間コミュニケーションが取りやすいこと。結果、開発・製品化のスピードを速められた。ビーカーレベルの実験から、実製品の生産までが一気通貫でできる。相手先のスペックの変化にも素早く対応できる。

 社名のメックは、「MEC=機械、電子、化学」を意味する。48年前の69年、電子基板のコンサル業として創業し、2年後に50周年を迎える。95年、パソコンのCPU用パッケージ基板に、同社の薬品が採用されたのが転機となって伸びた。2001年に上場。リーマンショックでPCの鈍化が影響して一時期売上は凹んだが、ここ数年はスマホ需要が好調で売上がアップしている。

 国内拠点は、本社である兵庫県尼崎市と、同西宮市、新潟県長岡市の3カ所。研究部門は尼崎にある。海外の生産拠点は、中国に2、台湾に1、欧州・ベルギーにも1、構えている。取引は各国に及び、香港には営業拠点を置き、韓国や米国は代理店を通して販売している。

 現社長は創業者の長男で、02年に就任した。社是は「仕事を楽しむ」。一日のうちの長い時間を会社で過ごすわけだから、その時間、仕事を楽しもうというのだ。従業員は350人。

 今後、個人投資家と外国人投資家をどう増やすかが課題という。株価が2000円を超えれば分割の可能性もあるという。

(この項終わり)(元沢賀南子執筆)