パーキンソン病のデザイナーが再びペンを持てた 腕時計型端末「エマ」
パーキンソン病による震えでペンを持てなくなったデザイナーを、再び字や絵を描けるようにした――こんな機器がある。マイクロソフトが開発した「エマ」という名の腕時計型端末だ。科学技術の進歩は人々の暮らしを豊かにできるという、科学の持つ可能性と明るい側面を実感できる好例だ。
「ソフトバンクワールド2017」の中で21日、講演をした日本マイクロソフトの榊原彰執行役員が紹介した。
講演によると、エマは英国の研究者が考案。パーキンソン病で、自分の名前を書くことはおろか、まっすぐな線を描くことすらできなくなってしまった女性デザイナーのエマさんのために開発した。
パーキンソン病は治療法のない不治の病だ。個人個人で震え方に違いがあるという。そこで腕時計型の端末で震えのパターンを計測し、その逆振動を流すことで震えを抑える仕組みを作った。プロモーション動画の中で、「エマ」を装着したエマさんは、アルファベットで自分の名を書き、線や図形を描くことができた。
科学技術の進歩というと、AIに人々の仕事が奪われるだの、AIが人に危害を加えないかだの、IoTで個人情報が企業や国家に収集されてしまうだの、負の側面ばかりが強調されがちだ。心の底から喜びにくい。
そんな中で、マイクロソフト社(MS)は、「AIの民主化」を唱える。特定の人だけがAIの力を手にするのではなく、だれでも使いやすく、リーズナブルに使えるようにする、という。
一方で、AIサービス・機能の開発原則を定めたそうだ。それは「AIは倫理観を持ち、人に危害を加えず、人の生産性を上げることが原則」という。この思想は社内外で共有し、すでにアマゾン、フェイスブック、グーグル、IBMらと協力しているという。この「パートナーシップonAI」には、近くアップルも入る予定という。
(元沢賀南子執筆、この項続く)