鴻海からの出資を昨年受けて、大幅な再編をした新生シャープ。「人に寄り添うIoT企業」を目指し、IoT(モノのインターネット)とAI(人工知能)を足したAIoTを進化させるという。成功例として、ウオーターオーブン「ヘルシオ」のメニュー提案や、このほど正式発売が決まった広島カープファン仕様のウエアラブル端末、ロボット型スマホ「ロボホン」での利用者との会話などを挙げた。
7月20、21日に開かれた「ソフトバンクワールド2017」での講演で、シャープIoT通信事業本部IoTクラウド事業部の白石奈緒樹・事業部長が話した。過去30年の家電メーカーから、2017~19年度に「人に寄り添うIoT企業」へと変革する。今後はIoTと8Kエコシステムが2本柱で、両者をクラウドでつなぐサービスも戦略的に進めるという。
ヘルシオは、インターネットにつながるキッチン家電だ。「奥様の相談役」という位置づけで、使い手が相談するとメニューを提案してくれる。「インターネットにつなげる機器のうち、実際に消費者がネットにつないでいるのは、普通は10%前後に過ぎない。だが、ヘルシオは30~40%がつないでおり、ネット活用がうまくいっている」と、白石事業部長は胸を張る。
クラウド上にメニューや作り方のデータを蓄積し、日々、充実させている。消費者がヘルシオに語り掛けると、その家庭での履歴を元に足りない栄養素を取るのに最適な献立を提案したり、「この素材で何が作れるか」といった利用者の問いかけに応えてメニューと作り方を教えたり。使い手が使うほどにカスタマイズされていくという。音声対話の技術は携帯電話で開発したものを投入しており、AIによるアップデートを繰り返しているという。
広島カープファン向けのウエアラブル端末は「funband(ファンバンド)」だ。真っ赤なデザインの腕時計型で、スマホにブルートゥースでつながる。センシング技術によって、試合中の腕の動きのデータを取って、バンドを振動させたり内臓LEDを発光させたり、選手ごとに応援ポイントとして貯めたり。カープの試合情報が流れてくるほか、利用者全体の盛り上がりを伝える工夫もされている。結果的に、ファン同士の一体感を高めているという。
カメラとセンサーのついたスマホ「ロボホン」(電話型ロボット)は、人間との会話が売り物の一つだ。会話が成立するにはタイミングがあることが分かった。ロボットから話しかけた方が人からも話しやすいため、ロボホンが人に話しかけるプログラムを組んでいる。ただ、話しかけのタイミングがちょうどよい時には、人は話を聞くし、答えもするので対話が成立するが、タイミングを外すとロボットからの話しかけが耳に入らないという。どんなタイミングが良いのかは常時アップデートを繰り返しているという。
ヘルシオの「COCOROキッチン」、空調の「COCOROエアー」など、クラウドにつながるIoTサービスは「COCORO+(ココロプラス)」と名付けられている。IoTを家電に導入したこのサービスで、他にも、いろいろな人間工学的なデータが取れ、ノウハウが分かってきた。
例えば、スマホに搭載している「EMOPA(エモパー)」という対話技術を、対話型のテレビに使ってみたところ、気持ち悪く感じた。スマホとテレビという機器のサイズの違いによって、人が心地よく感じる音声が違うことが分かったのだ。また、空調では、温度と湿度の関係で、湿度が高い場合は暖房を入れた方が涼しく感じるなど、地域による使い方の違いが傾向として分かった。
(この項「下」に続く、元沢賀南子執筆)