日本は相変わらずの低金利で、定期預金では利子はほぼゼロだ。資産を目減りさせないためには、元本割れリスクも承知の上で積極的な運用が必要だと分かってはいるけれど、では何を買えばいいのか。悩む一人の個人投資家として、各種の資産運用セミナーに顔を出してみた。話を総合すると――世界景気はまだまだ強含みで、特に米国株は強い。コア資産は安定的なファンドで運用し、積極的な投資には米株がお勧め。よりリスクを取れるなら新興国の株や債券もいいが、不動産投資はいまや頭打ち――ということらしい。
銀行や投資会社が積極的な投資を勧めるのは、個人がタンス預金でため込んでいる現金をなんとか吐き出させたいからだ。特に銀行は、融資で稼ぐかつてのビジネスモデルが低金利によって崩壊。新しい収益の柱を、投資信託の手数料やコンサルタントの委託料にシフトしつつあるという背景がある。
という事情を踏まえ、彼らは「投資信託を買わせたい/ファンドラップをさせたい」のが前提である、と肝に銘じた上で、銀行やコンサルタントたちの見立てを見てみよう。
今後も、世界経済は緩やかに景気回復するという前提で、投資戦略を練っていいという。景気は良く、国内外の株価(特に米国や豪州)は上昇を続けるだろう。一方で、米欧の金利は緩やかに上がり、債券の価格は下がると見られる。
そこで、特に投資先として考えたいのは米国株だ。というのも、米国は、世界のGDPの4分の1を占めており、しかもそのGDPは、7割近くを個人消費が占めている。EUや日本は外需依存率が高いが、米国は国内消費が中心で国内で完結しているため、他国の影響を受けにくい。しかも、経済成長も右肩上がりで、米国>欧州>日本の好成績だ。
トランプ政権が弾劾されたり倒れたりしないか、という政治リスク、北朝鮮が悪さをしないか中東で大問題が起きないかといった地政学リスクはある。ただし、米国株は、何かのリスクで一時的に下がることはあっても、事態が沈静化すると回復する可能性が高い。
昨年の大統領選でトランプ大統領が勝利した時、クリントン有利と思われていたため一時的に暴落したものの、すぐに持ち直したのを見ても分かる。それどころか、ウォール街は、トランプ大統領が公約通りに実行すれば大型減税・大型インフラ投資で景気はさらに良くなると歓迎ムードで、この間、株価はずっと上昇し続けてきた。
北朝鮮のグアム向けミサイル発射についても、ひとまず危機的状況を脱したと見るや株価は持ち直した。
逆に、キャピタルゲイン狙いならば、そうしたリスク時こそ仕込む好機だ。沈静化したら上昇するだろう株を、下がったタイミングで買う戦略もある。ただし、プロでも底値の見極めは難しい。注意点は二つある。一つは、手持ちの資産を全部つぎ込むような冒険はしないこと。二つ目は、反転せずに下がり続けるリスクを考えて、いくらまでなら下落が続いても持ちこたえられるか、あらかじめ損切りの数字と覚悟を決めておくこと。いずれにせよ、反転しなかった時に持ちこたえられるだけの余裕を持って運用するべきだ。
(この項続く)