積極投資をしないと資産運用はできないと思いつつ、何がいいのか――悩む一人として、銀行や不動産投資のセミナーに行って感じたエッセンスを紹介する6回目は、不動産投資について、その1。
不動産投資には2種類ある。一つは売買で儲けるもの(フロー)、もう一つは長期保有し賃料収入で儲けるもの(ストック)、だ。
前者(フロー)は、外国人投資家が東京五輪前に高値で売り抜けるのを目標に、都内の高層マンションなど高額の投資物件を買っているという噂がある。中国人投資家は比較的手の出しやすい小ぶりの投資物件を東京だけでなく大阪や福岡でも買っている。そうして強気の市場が形成されていた不動産売買市場だが、さすがにそろそろピークアウトしそうな感じだ。今買う人は最も高値で売り付けられ、今後は下がる可能性が高い。
後者(ストック)が、いま多くの不動産投資会社が個人に勧める投資法だ。一つは、土地持ちの人向けに、(場合によっては土地を持っていない人にも)マンションやアパートを「金融機関から借金をして、建てて」経営することを持ちかけるもの。もう一つは、新築でも中古でも、ワンルームでもファミリー向けでも、その人の資金的な余裕に応じて、区分所有物件を購入し、家賃収入を得ることを持ちかけるものだ。
賃貸住宅の家賃相場は、エリアや広さ、間取りなどの条件によってある程度決まっており、しかも、景気変動とはあまり連動せず、さほど上下しない。そのため、満室であればこれだけの利回りが見込める、というのが不動産会社の売り文句になっている。
ただし、あくまでも満室であれば、だ。だから、ローンを組んで負債を抱える場合は、これからの参入はあまり勧められないようなリスク状況になってきている。住宅の需給バランスが崩れ、今後、さらに家余りになることが予測されているからだ。特に、住宅建築メーカーが銀行と組んで勧めるアパート経営は、かなり危険と思われる。メーカーとしては、「建てさせ逃げ」、建ててさえくれれば、後は野となれ山となれ、である。(賃借人が入らないリスク回避のために賃料保証が付いている場合もあるが、保証期間は2年ほどだ。万一家賃保証をするにしても、住宅メーカーにとっては、建物の建築費に比べれば2年分の家賃補てんなど、大した負担ではない。)
年々、空き家問題が大きくなり、首都圏ですら一戸建ては余っている。空き家への固定資産税緩和が見直された後、空き家を活用しないと税金が高いというのが呼び水になり、かつてないアパート経営ブームになってしまった。また、相続税の控除額が引き下げられた結果、相続税対策として、親の持っていた一戸建てをアパートに建て直して法人所有にする、といった節税対策をする人もいる。こうして、次々とアパートが建てられ、地方都市ですら一軒家や空き地が次々とアパートに変わり、駐車場が足りない地域もあるほどだ。
だが、2018年問題、2019年問題と言われるがごとく、若年人口は18年に、世帯数は19年にピークを迎える。世帯数はもう少し伸びるかもしれないが、人口減は止められない。借り手が減る一方で、次々と新築物件が市場に投入され続ければ、今でも過剰感のある賃貸市場はさらに供給過多になる。その時、よほど立地がいいか、家賃がすごく安いなど他の条件が良くないと、借り手がつかないかもしれない。
物件としての良し悪しに関係なく住宅メーカーはアパート経営を勧めるだろうが、借り手がつかない物件も含まれているわけだ。銀行融資を受けてわざわざ投資用マンションやアパートを建てた場合、ローンの返済だけが残る危険性がある。そこを肝に銘じて、投資の誘いは聞いてほしい。
(この項続く)