女性を管理職に登用し、業績を伸ばしているカルビー。それが実現できた背景には、経営者である松本晃会長自身の覚悟と関与がある。
松本会長は自身の経営哲学について、三角形(右写真参照)を示しながら語った。
「うまくいく経営には欠かせない3要素がある。
1、ベースとなるのが、ビジョン。
2、その上に来るのが、具体的なプラン。いつまでに、どれくらい、何を、といった目標。
3、その上に、リーダーシップが必要。
良いビジョンがあり、どんな商品をいつまでにという具体的なプランがあり、経営者がリーダーシップを発揮すれば、会社経営はうまくいく」
そして、実際にものごとを成功させるには、以下の二つが秘訣だと説く。
「①トップマネジメントがコミットすること。
②具体的なゴールをセッティングすること。
いつまでに何をどれだけにする、と具体的なゴールを設定し、トップがコミットメントすることが必要。そうしないから、ほとんどの大企業は号令だけで成功しない」
改革は、トップの本気度で、進むも進まないも決まる、というのだ。
事実、松本会長自身が、女性の登用についてはトップマネジメントでコミットしてきた。誰をこのポジションにしろという人事権は持たないものの、「このポジションは女性にしろ」と指令した。他社ではなかなか進まない女性の登用が、カルビーでは着実に進んだのは、トップである松本会長が本気だったからだ。
松本会長はまた、「ダメな組織改革、良い組織改革」にも触れた。
「会社や組織の改革でダメなパターンは、大体が、まず人を変えるもの。人を変えると、変わった新しい人は何もしない。組織はそのまま。
人事と考課ほど面白いものはない。だから組織は年中人事ばかりいじって、結局うまくいかない。
そうではなく、まず仕組みを変えないと。仕組みを変えれば組織が変わる。人を変えるのは最後だ」
ほとんどの企業がダメなパターンだろう。トップは号令ばかりで人事をいじりたがる。しかもその下で実際に動かす中間管理職の男性たちは既得権益を奪われまいとする「抵抗勢力」だ。
「変革は既得権益を奪うことだから、力づくでないとできない。既得権を持っている人たちは『金、権力・権限、地位・身分』を手放さない。抵抗勢力は強いから、変わらない・変えられない」(松本会長)
松本会長がそこまでしてダイバーシティ―に取り組んだのは、すべては成果を上げるためという。
「組織を簡素化し、透明化し、ガバナンスを変える。給与制度も人材育成の仕組みも変革し、仕組みを変える。悪しき文化を壊し、女性が活躍できる環境や制度を整える。そうしないと成果は出ない」
組織改革は諸刃の刃だ。成果が出なければ、ダイバーシティ―が犯人とされ、抵抗勢力による揺り戻しが来る。あっという間に振り子は元に戻る。だから松本会長は、実績を上げることにこだわってきた。組織改革を進めることと成果を上げることは両輪なのだ。
(4月25日、日本記者クラブで開かれた松本晃会長の会見「JUST DO IT! ~カルビーのダイバーシティ―と働き方改革~」から)