積極投資をしないと資産運用はできないと思いつつ、何がいいのか――悩む一人として、銀行や不動産会社のセミナーに行って感じたエッセンスを紹介する5回目は、ファンドラップに学ぶ投資法についての続き。ファンドラップに預ける代わりに自分で自分の資産を増やそうと思う個人投資家が、具体的に彼らから学ぶべき考え方を紹介する。
ファンドラップは、プロが顧客から預かった資金を、ファンドに預け分けて全体で運用益を出すものだ。プロの運用管理者は、ファンドの預け替えを日々することによってパフォーマンスを上げ、顧客から管理手数料という報酬を得ている。個人投資家が学ぶべき最も簡単な投資法は、彼らの日々の作業を同じようになぞることだ。
① まず、自分の資産の全体像を把握する。
自分の資産全体のポートフォリオを把握しよう。金融資産、不動産、貴金属など不動産以外の現物資産……何をいくらずつ持っているのか。全体のバランスはどうか。現物ばかり持っていても、金融資産ばかり持っていても不安定だろう。将来的に使う時期や予定を考えて、どのくらい流動性を持たせるかなど、自分なりのバランスを決めて配分しよう。
② 金融資産の内訳を把握する。
① のうち、金融資産の内訳を見ておこう。現金(預貯金)、株、投資信託、リート、債券、年金保険、終身保険……何をいくらずつ持っているのか。国内と海外(米・欧・豪・その他)の内訳も確認しよう。
③ 「コア・サテライト投資」の視点で点検する。
②で把握した金融資産の内訳を、ファンドラップの運用法に倣って、安定を目指すコア部分と、積極運用するサテライト部分とに分けてみよう。コアは定期預金や安定型のファンドなどリスクの少ないもので、それ以外はサテライトだ。
ちなみに、定期預金は元本割れのリスクはないものの、1000万円は1000万円のままで、万一インフレになった時のリスクを回避できない。日本はデフレが長期に続く異常事態だが、日銀は2%のインフレ目標を掲げており、過去、バブルの頃などは3%台だった。インフレになると現金の価値は目減りするので、元本割れと同じことだ――として、銀行などは、ファンドや株など物価に連動する金融商品の購入を勧める。何を選ぶかはもちろん、あなた次第だ。
ここでチェックしたいのは、個人の陥る罠である、リスクを取り過ぎたり、逆に取らなさ過ぎたり、といったアンバランスが起きていないか、ということだ。それぞれの投資先を決める時、個々の案件ごとに検討・判断するため、後で全体を見たらどちらかに偏ってしまっていた、ということが起きがちという。賭け事が好きか、慎重か、といった性格にも依るだろう。
全体最適のためには、全体像をコアとサテライトに分けて、それぞれの内訳の割合を見てみて、どれかに偏っていないかを点検することが必要だろう。株ばかりに投資していても、株はまったくしていなくても、バランスは悪い。日本のものばかりでなく、米豪欧のものも持っていた方がいいだろう。リスクヘッジのためには、なるべくバランス良く持っていることが望ましい。単位株はしない代わりに、バランス型のファンドを持っていてもいいし、投資先が違うファンドをバランスよく何本か持っていてもいい。
④ 金融資産を定期的に見直す。
③の点検作業を、自分で決めた期間ごとに繰り返そう。
それが仕事であるファンドラップの担当者は毎日、相場をチェックするが、個人投資家には、それだけの時間も体力も気力もないだろう。でも、1カ月に1度とか3カ月に1度とか、自分で決めた期間ごとに運用成績を見直し、必要とあればリバランスのために、組み替えを考えよう。
株を持っている人ならば、株価チェックと銘柄の組み替えは日常的にしている作業だ。デイトレーダーなら一日に何度も、そうでない株主でも時々は確認しているはずだ。それを、金融資産全体でも実行するだけだ。こまめに組み替えるほど、安定的な運用ができるはず。ただし投資信託は売買すると手数料がかかるのを忘れずに。売買手数料を考えれば、ファンドはバランス型を長期保有する方が結果的に得かもしれない。
(この項続く)
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