ソフトバンクワールド(7月開催)で紹介された、ソフトバンク社自体の取り組み。企業とのコラボの実例その3をお届けする。同社が今後、コンサルタント業に力を入れていくだろうことが予測される。
6)村田製作所との協業
国産最大手のセンサーメーカーである村田製作所とは、LPWAモーター、ローパワーセンサー、ローパワーネットワークを使って何ができるかを検討しているという。
例えば、商品スペースや展示スペースの、温度管理やフロアの人の流れの管理。商談スペースのテーブルに温感度センサーをつければ、その机が使われているかどうか、利用状況がリアルタイムで把握できる。そのデータを、コンピューターで見て管理できるようにすれば、いつ人が入ったか、何分くらい滞在したか、稼働率の低い場所はどこか、開いているのに使われない席がある、といったことが分かる。
この仕組みをオフィスや飲食店に転用すれば、席ごと、時間ごとの稼働率が分かる。机はいくついるのか、その場所には置く必要がないのではないか、といった議論ができ、設備の改善につながる。
7)アッサアブロイ
電子ロックメーカー最大手のアッサアブロイ社をパートナーに、デジタルドアロックによるスマート・ロック・ソリューションを開発中という。
同社は、シリンダー(カギ穴)がない、高品質なデジタル鍵を作っている。デザイン性に優れ、暗証番号、ブルートゥース、ICカードの3つがセットになっている。施錠・開錠を遠隔地で知ることができる。電子機器ネットワークにつなぐこともできる。
提供先として考えているのは、例えば以下のようなケースだ。
・民泊を検討しているビルオーナーへの導入。1階がテナント、2~5階が民泊、6~7階が賃貸、などといった場合、需要に合わせて賃貸→民泊と用途を変更しても、鍵の付け替えは不要、クラウドで利用制限を変更するだけで、すぐにOKとなる。
・民泊ビジネスをしている個人オーナーに、スマートロックを提供。「17時~翌朝9時、この番号で開く」などと、時限つきで開錠できるようにする。民泊で煩雑で面倒な鍵の受け渡しを省くことができる。コストも安く、セキュリティー上も安心だ。さらに、ホスト用ダッシュボードを整えれば、外国人との外国語でのやりとり+αが可能になる。
訪日外国人2500万人が目標だから、今後の民泊では複合施設が増えると予想される。スマート・ソリューションの需要は増えるはずだ。民泊ビジネスに必要なものが何かを、ヒアリングをかけ、必要ならば別会社とも組んでシステムを構築したい。
民泊だけでなく、シェアオフィス、ホテル、賃貸業者、ディベロッパーなどの意見を取り入れ、何が一緒にできるかを考えたい。パートナー企業や顧客とともに、スマートロックからソリューションを考えて進めたい。
8)キューブ型ユニット構想
デジタルロックとサービスの掛け合わせは、空間×サービスのバリエーションを増やすと考えている。例えば、住宅やオフィスの遊休空間とサービスをマッチングし、価値を提供するビジネスが考えられる。住宅やオフィスはシェア(共有)によって空間を有効活用できる。空間への付加価値の提供として、キューブ型IoTサービス・ユニットを検討している。
キューブ型IoTユニットとは、オフィス内のデッドスペースに設置するコンテナ型の箱のこと。箱はスマートロックで管理し、デジタルロックの認証で開閉する。センサーやデバイスによって、誰がいつ入ったかが分かる。遠隔管理や、予約課金、決済など、機能を一つのパッケージにする。
オフィス×リラクゼーションを組み合わせれば、働き方サポートもできる。勤怠管理から適切な休息ができるようにしたり、従業員のバイタルデータを取ってパフォーマンスの維持管理をしたり。
ほかにも、デジタルロックによって、住宅を一時的なシェア空間にすることもできる。留守中のクリーニングや宅配便の受け取りもスムーズにできる。
スマートロックは新しい取り組み。新しい空間利用を考えている企業と組みたい。
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いずれにしろ、ソフトバンク社は、ビジネス・アイデア・コンサルとして機能するつもりだという。顧客の声をたくさん蓄積し、共創を体系化し、共創プログラムを作る構想だ。ソフトバンクが顧客から引き受け、議論しながら一緒に作るが、不足部分は別のパートナーと計3~4社で共創するという。
プラットフォームを提供するだけでなく、そこでの協業によって他社からもデータやノウハウが集まり蓄積される。それを生かしたコンサルタント業が、ソフトバンク社にとって今後のビジネス展開の一つであることは間違いないようだ。
(この項終わり)(元沢賀南子執筆)