積極投資をしないと資産運用はできないと思いつつ、何がいいのか――悩む一人として、銀行や不動産会社のセミナーに行ってみた。そのエッセンスを紹介する3回目は、ファンドラップの投資法を紹介する。個人が投資を考える上でも参考になるからだ。とはいえ結論は、身も蓋もないが、運用に近道はない、ということ。マイナスにならないためには、地道に市場をチェックし、ポートフォリオの組み換えを日々すること、これに尽きる。

 1回目で銀行や証券会社はファンドラップを売りたいのだ、と書いた。それを重々承知の上で、投資の参考として紹介する。

 個人向けのファンドラップが登場したのはここ数年のことだ。取り扱いの下限も、かつての1億円から現在は300万円、500万円などと下がっている。超資産家向けだったものが、サラリーマンまで対象が広がってきた。投資信託と違って購入時の手数料はかからないものの、運用を一任するための手数料が必要になる(一律の場合と成功報酬型があり、何%かは各社ごとに違う)。銀行や証券会社ごとに、安定的なものから比較的リスクを取るものまで、いくつかのコースに分かれている。どのコースを選ぶかは投資する当人の判断による。

 ただ、いずれの場合も、運用の考え方は同じだ。いわゆる分散投資で、安定的なものと、リスクを取る積極的なもの、株や債券などに分散投資する。ファンドは、預金のように元本は保証されてはいないが、運用次第では、株価が前年比でマイナスになっている時でもプラスの成績を出すことも可能だ。

 ある銀行では「コア・サテライト運用」の手法を使っているという(図参照)。コア=太陽、サテライト=衛星だ。コアは定期預金や、比較的リスクの低い安定型のファンドなどで安定的にリスクを抑えて運用し、サテライトは債券や株、リート(不動産)などリスクもある程度覚悟した上で運用益を取りに行く。コアは日常的な手入れがいらないので放置したままでいいが、重要なのは、いかにサテライトの中身を運用管理者が把握し、制御するか、ということだ。

 ファンドラップの場合は、運用担当者が、あまたあるファンドの中から、国内外の株や債券の配分を決め、投資するファンドを選ぶ。日々の成績を追い、世界の市場の方向性から、どのファンドを多く持っている方が成績が良くなりそうか、どれが成績が悪そうだから減らす方がいいかを考える。リスクも考慮し、常に全体のバランスを取るようにする。決められたタイミングで、その都度、組み合わせと配分割合を見直す。見直しのタイミングは金融機関次第だ。

国内・海外/株・債券・リートなどの組み合わせの割合も、無数にある。どのジャンルのどのファンドを選ぶかも決まりはない。結果的に間違いだったことになるかもしれないが、大当たりになる可能性もある。最初に正解があるわけではないのだ。

ただ一つだけ共通して言えるのは、ポートフォリオを放置していては好パフォーマンスは出せない、ということだ。常に相場をチェックして、悪そうなら減らし、良さそうなところへ積み増す、という地道な再配分の作業を日常的にしていないと、パフォーマンスは期待できない。組み替えをしたからといって成績が上がることが保証されているわけではないが、一度決めたファンドの見直しを怠ったままでは、みすみす運用がマイナスになるのを見逃しかねない。より良いパフォーマンスのために、日々、組み替えを考えなければならないのだ。

勝つ=プラスになることより、負けない=マイナスにならないことの方が、重要だろう。

(この項続く)