投資したくなる会社4~さわかみファンド運用報告会から

日本電産の告知

HDDで成長した日本電産の次の成長戦略の一つが自動運転技術という=さわかみファンド運用報告会のパンフレットから

 さわかみ投信が大阪市で開いた運用報告会に参加した30社のうち、投資したくなる魅力的な企業を紹介する第4回は日本電産(Nidec、東証6594、本社・京都市)。佐々木蔵之介のテレビCMで自動運転技術をPRしているモーターメーカーだが、その成長の原動力がパソコンに搭載されるHDDだったことは前回書いた。パソコン需要が落ち込む中、今年度の売上高1兆3700億円(予想)を30年には10兆円(目標)に押し上げるための、HDDに代わる次の技術・製品は何があるのだろう。

 成長分野での新しい製品として、日本電産のIR担当者は具体例をいくつか挙げた。

 まず、メーン事業である精密小型モーターの分野では、「リニア浸透アクチュエータ」という振動・触覚デバイスがある。触ることで機械と会話をするための装置で、次世代の、新しい人と機械の対話ツールになることが期待されている。例えば、マウスは視覚的な対話ツールだった。アレクサ「エコー」は話すと答える、音声のインターフェイスだ。リニア浸透アクチュエータは今年で3年目。まだ時間はかかるが、スマホ、VR、スマートウオッチなど様々なデバイスへの対応・搭載が期待されている。

 VR(バーチャルリアリティー)関連でも、同社製品が使われている。いまはまだVRゲーム程度だが、今後、自動運転関連でも使われるかもしれない。例えばグーグルカーは、屋根の上にレーザーを積んで周りの状況を把握している。そのモーターの技術は、同社の延長上にある。

 車でいえば、電気自動車(EV)は大きなビジネスチャンスとなる。2040年には、ほとんどの車がEVになっていると予測される。英仏独、中国などの政府が、地球温暖化対策や公害対策で、ガソリンエンジン車の販売の禁止や規制の検討を始めたからだ。いずれガソリンスタンドの代わりにEVスタンドができ、エンジン車向けの油圧系や機械系の技術は不要になる。

 EV専業のテスラ・モータースがすでにそうだが、モーター・アクチュエーター、電子制御、センサー、バッテリーなど、すべてが電気用の新しい部品にとって代わられる。日産、トヨタ、本田など国産の自動車メーカーは、下請けにエンジン車用の部品メーカーを持っているのが重荷になり、新技術への素早い転換が図れていない。だが、EVが中心になれば、エンジンに頼る製品や下請け工場は不要になる。テスラが求めるような、EV向けの新しい部品は高い成長性が見込まれる。

日本電産の車搭載戦略、株主向け資料

90年代から技術開発してきた車搭載用の機械に、今後の成長を託す日本電産=個人投資家向け資料から

 日本電産は電動パワステの会社を95年に買って以来、技術開発を進めてきた。エンジン車は部品点数が300点以上もあり、ガソリンの機械技術は難しい。だが、EVになると部品点数は減るうえに技術的にも簡単で、あっという間に価格は下がると見込まれるという。世界中の車がEVになればおそらく、現在の1台200万円から100万円以下に下がるだろう。パソコンの価格が下がったのと同じだ。

 問題は、その時に誰が生き残るかだ。アップルは、すべての部品を自前で作っていたが、ウインドウズ+インテル連合に負けた。インテルはいまやパソコンの85%に搭載されている。車でも同じことが起きると、日本電産は見ている。「2030~40年代に、車産業でのインテルになろうと思っている。世界中の車に“Nidec inside”となりたい」と、IR担当者。そのためにもEV対応を進めるという。

 ほかに、家電では現在、省エネモーターの50%が日本電産の製品だという。また、客船も今はエンジンでなくモーターで動く時代だ。動くホテルなので、静かでなければいけない。そのため、昼間に動かして作った電気を蓄電し、夜の動力はモーターによる。ほかに、産業用ロボットでは、サービス用ロボットが期待されている。すでに同社が持っている技術からの発展を企図しているという。

 同社が、絵に描いた通りに「売上高倍々ゲーム」を遂げられるなら、業績は右肩上がりになる。ならば、もし株主になっても損はしない、とIR担当者。「売上が上がると、利益率が上がり、一株利益も上がる。もし、調整局面があっても、よほどでないと損をしない。下がったら、上がるのを待っていればいい」

 信じるかどうかは、もちろん投資家の見方・考え方次第である。

(この項終わり)(20170921、元沢賀南子執筆)