ソフトバンクワールドの講演では、ソフトバンク社の取り組みも発表された。すでに多くの企業とのコラボでサービスが始まっているという。挙げられた事例をいくつか紹介する。
1)ホンダ
テスト車両がどこにあるのか、その場所を把握するためのシステムが稼働しているという。
車メーカーは開発中に多くのテスト車両を作り、走行試験をする。ただし企業秘密が漏れないよう、テスト車にはカムフラージュするためのカバーがかけられている。外見上はどの車種だか分からない状態の車両が、研究施設内にある屋内外の巨大駐車場にずらりと置かれている。
スパイの防止にもなるが、テストドライバーや研究者が必要な時にも、どの車が対象車なのかがぱっと見では分からない。置き場所も固定されていないので、いちいちカバーを外して中の車を確認しないといけなかった。どこにあるのか探すのは非効率だとして、解決するための端末サービスを作った。
車に設置したセンサーで位置情報を送る。誤差は数メートルだ。屋外はGPSで、屋内の立体駐車場はIMESで、3D位置情報を取る。通常のGPSではここまで正確な位置は分からない。数メートルの誤差は、衛星技術によって可能になったという。
このシステムの導入後は、対象車がどこにあるかが簡単に把握できるようになり、出庫するために探す手間がなくなったという。
2)ミシュラン(タイヤ)
トラック向けの大型タイヤが悩みの元だった。
タイヤが破裂するなどで運転中に事故を起こすと物流が止まる。ユーザーから予防したいとの要望があった。
すでに、トラックの中で、その車がいま装着しているタイヤの空気圧データやタイヤの温度が見られる仕組みはできていた。
ただし、こうしたデータを運転手が見られたところで大した意味はない。トラックを管理している運送会社の事務所の人こそが見たいものだ。
そこで、空気圧や熱といったタイヤのデータと、GPSによる位置情報を、通信で事務所に送るシステムを構築した。管理者がそのデータを見て、例えば、空気圧が下がったとか、タイヤの温度が上がったとかで、バースト(破裂)の危険がある場合、運転手に「休憩しろ」と指示を出すようにした。
もともとは、タイヤがパンクした時に、GPSで位置情報が分かれば、修理する子会社がスムーズに駆け付けられるとの発想からだった。ところが、実際には、空気圧や温度のデータを送ることによって、タイヤの摩耗度を知り、交換時期を適切に知ることもできる。機会損失と事故の双方を防げる。バースト+位置情報→新ビジネス、というわけだ。
データをネットワークに送って可視化することで、将来の発展が見込める新ビジネスにつながる、というIoTらしい展開だ。
(この項続く)(元沢賀南子執筆)