投資したくなる会社2~さわかみファンド報告会から
さわかみファンドを運営するさわかみ投信が9月2日、大阪市で運用報告会を開いた。一般投資家向けに事業内容を説明した30社の中から、投資したくなる魅力的な企業を紹介する第2回は、トプコン(東証7732、本社・東京都板橋区)。ICT建機、IT農機、眼科向け診療機器を作るメーカーだ。IoTをいち早く導入。GPSにつないだトラクターによる農作業の自動化、GPSと3D測量によるブルドーザーなど建設機械の3Ⅾプリンター化、クラウドにつないだ眼科機器による診断補助システムを開発、販売している。
トプコンの強みは技術力だ。「世界初や世界ナンバーワンの商品を持っている」と、執行役員で広報・IR室長の仲雅弘氏は説明する。過去20年、成長分野で技術力のある海外メーカーを積極的に買収することで、大きく海外展開し、世界的に市場シェアを取ってきた。
同社が目指すのは、医・食・住の分野で、社会課題の解決により事業を拡大すること。売上高は連結で1284億円(2017年3月期)で、事業領域別では、「住・食」が売上高の3分の2にあたる818億円、「医」が同3分の1の429億円を占める。
「住・食」では、創業の柱である測量技術にGPS技術をつけた3D測量とIoT化で、建機の施工や農機の作業を自動化するシステムを確立した。「医」では、眼科用の検査診断機器や治療機器を扱い、画像データをクラウドで集めて診断を助けるシステムも開発した。建機のICT自動化施工システム「トータルステーション」は世界シェアで35%とトップ(国内シェアは75%)を占め、3D眼科検診機器「3D-OCT」も世界シェアの30%とナンバーワンだ。
トプコンは「住・食」をPOC(ポジショニング・カンパニー)事業と位置付けている。測量技術にGPSを組み合わせた座標計算は、国産衛星「みちびき」の打ち上げ成功で精度がより高くなった。GPSとカーナビなら10~30メートルの誤差のところを、みちびきとGPSなら、静止時にはミリ、動いていてもセンチ単位で特定できるほど高性能になった。
ICT自動化施工「トータルステーション」は、この測量技術とGPSを組み合わせた座標計算で、建機に自分の位置を知らせ、自動制御で土木工事ができるシステムだ。建機には高性能GPSをつけ、3次元施工の設定を組み込む。このICT建機を使うと、施工精度は上がり、生産性は2倍くらいに上昇する。
これまで土木工事の現場では、まず測量士を呼んで測り、設計し、その通りに施工しては、測量して仕上がりを確認していた。人によるアナログな測量作業が必須だった。
だが、ICT自動化施工では、人が担ってきた作業を機械化できる。空からドローンで撮った3Ⅾデータを、地上の3Ⅾレーザースキャナーのデータで補完する。こうして実測した3次元データをもとにCADで3次元設計する。この3D設計図をUSBメモリでブルドーザーなどの建機に入れれば、自動的に設計図通りに3次元で土を動かす。「ブルドーザーの3Dプリンター化」(仲氏)である。米欧で大ヒットしているという。
今はブルドーザーとパワーショベルが多いが、他にもローラーなど様々な建機が自動化されている。世界全体で建機への搭載率は20%だが、「今後はより増えるだろう」と仲氏は見る。
日本でも、米欧に15年遅れてようやく昨年4月、国交省が「アイ・コンストラクション」を始めた。測量をレーザースキャナーにして、3次元データを一気に取る。公共工事は人を雇う景気対策が目的だったから、これまでは省力化をしてこなかった。ところが、このところ建設現場は深刻な人手不足に陥っている。生産性を50%向上させるため、国交省が自動化を進めることに。
まずは、国の直轄の億円単位の工事のみで始まった。昨年は3000億円の予算だったが、今年は5000億円に。来年は1兆円、その次は1.5兆円…と予算も拡大し、地方自治体にも普及していくとみられる。公共工事全体は減っているが、アイ・コンストラクションは増えている。対応しないと仕事がなくなるため、全国の建設会社がアイ・コンストラクション対応を迫られている。トプコンにとっては大きな商機である。
工事は幅も広い。アイ・コンストラクションでの発注は、「昨年は土工事だけ、今年は補装工事。補修工事はまだ入っておらず、将来の課題だろう」と仲氏。補修工事のIT化は、今はまだ、ドローンを上げてカメラで補修用のデータを撮影する程度だというが、工事の自動化の流れは止まらないと見ていいだろう。
トプコンでは、測量技術+GPSを使っての自動制御を、トラクターなどの農機にも搭載している。IT農業である。こちらもブルドーザーと同様、欧米でまず始まった。
欧米では農地は水平線まで広がるため、日没で作業を中断すると、翌日にどこから始めるのかが分からなくなる。正しい作業場所まで行って帰るのにロスが出ていた。これをGPS制御することで、50センチのオーバーラップが5センチで済むようになった。往復で15~20%の生産性向上になる。農機では今は世界で30%の搭載率だが、「10~20年後には4分の3になる」と仲氏は予測する。
農業用トラクターをセンチ単位で動かせるのは世界でも3社だけという。トラクターに積むGPSセンサーをトプコンのほかは、ニコン・トリンブル(米国)ともう1社だけで、参入障壁が大きい。日本国内での自動制御トラクターはまだまだこれからという。
ブルドーザー、トラクターともに、米欧豪のメーカーにOEMでGPSセンサーを提供している。数は増えており、ブルドーザーはシェア40%で世界ナンバーワン、トラクターは世界3位のシェアだ。測量機械も、35%で世界シェアナンバーワンを誇る。
(この項続く)(20170914、元沢賀南子執筆)